先生の数だけドラマがある 29 ~分かりやすい彼は憎めないやつ~
謎行動は意識してなのか?無意識なのか?
どんなクラスにも何かしらの問題を抱えた子どもたちはいました。
表立って問題行動を起こす子もいれば、家で隠れて何かしてしまう子もいるし、対処の仕方もいろいろでした。
そんな子どもたちの中で、忘れられない子がいました。
彼は問題を起こすと決まってある行動を起こすので、ある意味とてもやりやすかったのでした。
その決まった行動とは「部屋の模様替え」
彼は何か悪いことをすると決まって自分の部屋の模様替えをするのでした。
もちろん、担任したばかりの頃は気が付きませんでした。
問題を起こした子供のところには基本的に家庭訪問することになっていたので、何回か通っているうちに気が付いたのでした。
家庭訪問すると決まって部屋を見せてくれるこの子はとてもきれい好きに感じました。
そして、問題を起こした後に行くたびに模様替えされていました。
ある時には、問題行動に関する情報が特に何もないのに、彼が部屋の模様替えをしたという話を聞いて、試しに「何か話すことはない?」と鎌をかけてみたこともありました。
結果はビンゴ。
「なんで分かったの?」と不思議そうにする彼は、その時点で部屋の模様替え癖を分かってなかったんでしょうね。
彼の問題行動の大半は煙草に関するもの。
やっちゃいけないと分かっているのにやってしまうから、その分落ち着かなくなって部屋を片付けることで落ち着こうとしていたのかもしれません。
頭を整理するために、部屋の中の家具を大移動して、模様替えをしてしまう。
そして、問題行動に関しては叱られて、部屋がきれいなことでは褒められるを繰り返していたのでした。
体は大きかった彼ですが、寂しがり屋のところもあり、そうやって構って欲しいというサインを出していたのでしょうね。
そんな彼は卒業までに何度も模様替えしたお部屋を見せてくれました。
そして、なんとかかんとか高校へは進学しました。
問題行動時模様替え癖については卒業する時に、
「なぜいつも煙草とかってバレたの?先生にはなぜ分かるの?」
と聞かれたので、
「あなたは何かするとすぐに部屋の模様替えしていたから、すぐ分かったんだよ」
と教えてあげました。
本人は「そうだっけ?」と半信半疑でしたが……。
今はもう十分にいい大人になっていることでしょうけれど、あの時の模様替えのセンスが今も何かに活かされていたら楽しいなぁと思ったりするのでした。